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2023.03.29

エーザイ株式会社~ダイバーシティ経営の実践事例~

 

紹介

エーザイ株式会社では、製薬業界の競争環境が目まぐるしく変化する中、中長期的な成長を目指したESG経営の実現を課題とし、多様なステークホルダーとの関係性を基盤に顧客ニーズに長期的に応えていくためのグローバルプロフェッショナル人材戦略に取り組んでいます。

管理職の意識改革、人事制度改革を推進している他、グローバルなマインドセットを活かして意思決定をリードできる人材を「グローバル人材」と定義し、グローバル人材の採用と育成にも注力しており、施策を通じて国を超えた人材育成と一体感の醸成を図っています。

本記事では、同社がどのようにダイバーシティ経営を推進しているか、またダイバーシティ経営において重要となるグローバル人材育成の具体的事例や成果についても紹介していきます。

エーザイ株式会社

東京都 :1941 年設立
事業概要 :医薬品の研究開発、製造、販売及び輸出入

ダイバーシティ経営の背景とねらい

経営課題:製薬業界の競争環境が目まぐるしく変化する中、中長期的な成長を目指した ESG 経営

エーザイ株式会社(以下「同社」)は、新薬の開発に10 年以上の時間がかかり、中長期的な視野に基づくサステナブルな経営が求められる製薬業界の中で、「ESG経営」を実践した先進的な取組を多数導入している。

そのような同社にとって重要なキーワードは、「事業環境の変化への適応」、そして「世界中で深刻化する『ギャップ』の解消に向けた取組」である。

前者の『事業環境の変化』とは、大きく 2 つあり、1つは、高齢化が進む日本をはじめとする世界各国における医療費抑制策であり、もう1つは、製薬業界の市場拡大である。

中国・アジア諸国の医薬品市場が拡大するだけでなく、マーケットのボーダーレス化が加速している。

例えば、AI や IoT を含む様々なデジタル技術を駆使した研究開発・サービス開発が製薬業界を席巻している。

後者の『ギャップ』は、医療ニーズが満たされていない状態を指す。

例えば、認知症患者は世界中で増加の一途を辿っているが、2003 年以降で米国食品医薬品局が承認した新薬は存在しない。

また、開発途上国を中心に必要な医薬品・サービスへのアクセスができない患者も存在している。

こうした医療ニーズが満たされていない患者に対して医薬品を届け、企業の成長に繋げていくことも重要な経営課題として認識されている。

人材戦略:グローバルタレントマネジメント体制の整備と、「働き方改革」で多様性を受容する労働環境を醸成

こうした取組を推進すべく、同社はグローバルな視点に立った人材戦略を進めている。

まずは、グローバル人材の採用と育成である。

特に海外においてデジタル技術の活用や医薬品アクセスに係る外部ステークホルダーとの協力が盛んになる状況に鑑み、日本本社においてグローバルなマインドセットを活かして意思決定をリードできる人材を「グローバル人材」と定義し、育成に取り組んでいる。

具体的には、2016 年に同社は、「エーザイグローバルタレントマネジメントポリシー」を規定し、多様性を受容する組織であることが患者のニーズをより多面的かつ深く理解できることにつながり、ひいては競争優位性につながるイノベーションを起こすことができる、という意識を社員に浸透させた。

また、「多様性・異質性の積極的な包含」「企業理念であるヒューマン・ヘルスケア(hhc)理念に共感する人材の獲得」「事象を直視し、新たな事業機会を見出す能力を持つ人材の発掘・育成」などを同ポリシーに織り込み、求める人材像と、その多様性を認めて協働することこそが今後の社会価値創造の推進になることを明示した。

さらに、こうしたグローバルを通じた人材施策の方向性及び目指す姿を明確化していく上で、現在同社の各国拠点の中でもダイバーシティ領域でグローバル標準に追い付いていない日本の国内拠点における人事制度改革に取り組んでいる。

日本国内では「働き方」をキーワードに人材戦略を構築しており、人事評価制度や勤務時間・勤務地の柔軟性を向上させるための取組や、多様性を受け入れ、成長につなげる組織風土の醸成に向けた取組などを推進している。

ダイバーシティ経営推進のための具体的取組

ダイバーシティを受け入れ、企業成長に活かせる組織風土を醸成

ダイバーシティ経営において価値観や方針を実践するために不可欠となる管理職に着目した同社は、2017 年に新任組織長には「ダイバーシティ研修」を、全管理職には「イクボス研修」を提供し、管理職の意識改革に注力した。

また、人事評価の項目に「多様性への対応」を設定するとともに、相互理解を促すべく社員の中長期のキャリア形成を上司が一緒に話し合い共有する「プロフェッショナル開発レビュー」を 2016 年に制度化するなど、人事制度の改革を行った。

健全な意思決定の担保に向けた管理職以上におけるジェンダー平等の確保

2016 年に人事制度改革を行って以来、女性社員のキャリア意識の醸成や挑戦意欲の向上を企図した育成プログラムに加え、キャリア採用で女性の経営職や経営職候補の獲得にも取り組んできた。

こうした取組が実を結び、特に営業部門では、医薬情報担当者(MR)に従事している女性社員は、全 MR の約半数にまで上った。しかし、管理職以上の職階における女性比率は、全社での女性比率(24%)に追い付いていない。

そのため営業部門では、2018 年度から組織単位の女性活躍推進プロジェクトを立ち上げ、2020 年8 月には課題解決の共有化を目的とした全国フォーラムをウェブ上で開催した。

また、配偶者出産休暇の新設など、育児や看護・介護等のケアワークに関わる休暇や休業の制度改定を行い、男性社員を含めたワーク・ライフ・バランスの実現を進めている。

多様な属性の人々が活躍できる環境づくりに向けた人事制度改革

同社は、2012年に定年を60歳から65歳に引き上げ、様々な経験を持つミドル・シニアの活躍の場を広げる施策を推進している。

また、メンタリングプログラムを開始し、見識の高いミドル・シニアがメンタ―となり、若手社員の課題解決とキャリア形成に自身の経験やネットワークを用いた1to 1の支援を行なっている。

さらに、2020 年度に、デジタル系中途採用者を中心に、入社後の「戸惑い」や「気づき」を共有するフォーラムをスタートさせた。

こうした採用と入社後のフォローをきめ細やかに行う事で、既存の社員と多様な属性の社員や中途採用の社員を有機的につなぎ、多様性を受容する風土づくりに取り組んでいる。

グローバル人材育成のためのプログラムの体系化

かねてより同社は、グローバル人材の育成を加速させる研修制度を体系的に取り組んでいる。

海外リージョン社員と国内社員がほぼ同割合で参加し、リージョンと機能を横断する選抜型のグローバルリーダー育成プログラム(「E-GOLD プログラム」(CEO 主催)や「E-ACE プログラム」(CTO(チーフタレントオフィサー)主催))を継続的に実施している。

さらに、エーザイグループ内で国を超えた派遣を行う「グローバルモビリティプログラム」も実施している。

これまで参加した約 80 名が海外経験を経てグローバルビジネスをリードできる人材へと成長している。

プログラムでは、海外から日本に派遣される社員が参加者の約半数を占めており、日本国内の拠点でのダイバーシティへの理解や受容の文化醸成にも大きく寄与している。

また、国内営業部門を対象に、国を超えた活躍を希望する社員に対して、語学力の向上、異文化のビジネスシステム・マネジメント、ネゴシエーションや生活習慣を理解するためのプログラムを導入した(累計 95 名)。これらの人材育成施策を通じて国を超えた人材育成と一体感の醸成を図っている。2020 年 7 月時点で執行系のトップである執行役 30 名中、外国人は 6 名である。

ダイバーシティ経営による成果

多様な人材のキャリアアップとプラットフォームビジネスの順調な立ち上げ及び新薬開発での成功

同社において 2010 年度時点で 3% であった女性の管理職比率は、2020 年 4 月時点では、10.4% に大きく前進した。

一方、執行役の女性比率は 13.3% であるが、一つ下の階層にあたる組織長の女性比率は 8.4% であり、まだ課題として残っている。同社は女性活躍推進プロジェクトを軸とした取組を今後も継続・発展させ、更なる成果の増大を目指している。

また、グローバル人材の育成によって海外拠点の社員や社外の企業・組織との協働が促進されることにより、プラットフォーム事業の立ち上げといった新規事業で効果が出てきている。

同社は、2010 年より全国各地の自治体や医師会、薬剤師会等との地域連携協定を締結し、認知症に対する理解促進、早期発見・治療等、認知症当事者とそのご家族が安心して暮らせる「まちづくり」を積極的に進めてきた(2020 年 3 月末時点で 44 都道府県 167 カ所)。

2018 年には、認知症薬の価値の最大化だけでなく、社会を変えるイノベーションの実現に向けて専門組織を立ち上げた。製薬他社、行政、医療機関、介護施設、診断薬開発企業、IT企業、保険会社等と連携することで、異なる強みを融合し新しい価値を創出する「認知症プラットフォーム エコシステム」の構築に取り組んでいる。

引用:経済産業省 ダイバーシティ経営企業100選ホームページ

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