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2023.04.18

シスメックス株式会社~ダイバーシティ経営の実践事例~

 

紹介

シスメックス株式会社は、異業種からのヘルスケア業界参入、医療の分散、AI や再生技術などによりもたらされる医療分野の変革など、同社を取り巻く環境の変化に直面しており、競争力維持のためにデジタル技術を中心とした「技術ポートフォリオの拡充」が急務と考えています。

そこで、社内人材の育成・活躍推進に加え、異業種からの人材採用も積極的に行い、ダイバーシティ&インクルージョンを推し進めるとともに、グループ企業理念「Sysmex Way」を基軸とした諸施策を展開してきました。

グローバル社員の一体感の推進、次世代リーダーの育成、働きやすさを追求した社内環境整備などの取組を通じて、ダイバーシティを重視する文化が醸成され、先端技術開発における外国籍人材の活躍推進に寄与しています。

本記事では、同社がどのようにダイバーシティ経営を推進しているか、具体的事例や成果についても紹介していきます。

シスメックス株式会社

兵庫県 :1968年 設立
事業概要 :臨床検査機器、検査用試薬ならびに関連ソフトウェアなどの開発・製造・販売・輸出入

ダイバーシティ経営の背景とねらい

経営課題:競争力維持のためにデジタル技術を中心とした「技術ポートフォリオの拡充」が急務

シスメックス株式会社(以下「同社」)は、血液や尿などを採取して調べる検体検査用機器と検査試薬の研究開発から製造、販売、および機器メンテナンスサービスと運用サポートを一貫して展開し、収益性の高いビジネスモデルを創出している。

現在、同社の主力事業であるヘマトロジー(血球計数検査)分野では、グローバル市場において過半数のシェアを占める。

また、今後の更なる企業成長を目指し、患者一人ひとりにあった医療を提供する個別化診断や病気の予防を含む初期医療を指すプライマリケア(開業医を含む身近な医師・医療施設)を中心に、遺伝子分野や医療ロボット開発を次世代事業と位置づけて取り組んでいる。

一方、異業種からのヘルスケア業界参入により同社の競争環境は変化している。また、医療の分散により、プライマリケア、予防や未病といった領域への関心が高まり、精密医療や標的型医薬、個別化診断が更に進展している。

それに伴い、AI やロボット、IoT、VR、再生技術などが医療分野に変革をもたらすなど、同社を取り巻く外部環境は大きく様変わりしている。

そのため同社においては、既存事業の収益性の向上に加え、AI や IoT といった技術を取り込みながら、持ち合わせている技術の拡充が求められている。

この課題を解決するには、多様な経験や背景を持つ人材の獲得と活躍による相乗効果を生み出すことが不可欠であり、そのためには、ダイバーシティ&インクルージョン(多様性とその受容)を推し進めることは避けて通ることができないと認識されている。

人材戦略:異業種からの人材採用が加速する中で、グループ企業理念「Sysmex Way」を基軸とした諸施策を展開

同社は、サプライチェーンをグローバル展開する一方、試薬・機器の研究開発を中心とする製品開発から製品販売の流れを一貫して自社及び日本国内で構築している。

そのような同社にとって、市場ニーズや顧客の要望を多方面にわたって吸収し、新たな事業戦略に反映させていくためには、高い専門性や経験をもった人材が必要となっている。

同時に、前述の次世代事業への進出・展開に向けて、社内人材の育成・活躍に加え、社内にはない知見や技術を持った人材の採用・活躍にも重きをおいている。

既に直近の10年間では、事業領域拡大に伴いグループ全体の社員数が 9,000 人超に倍増。同社の社内では比較的早い時期から社員のダイバーシティは実現していたが、様々な文化、信条・価値観や経歴を持った社員が加わるにつれ、互いを尊重し、その能力を最大限に発揮してイキイキと働ける「インクルージョン(受容)」に注力する必要に迫られていた。

2025 年までを目標年に据えた同社の長期経営戦略では、「特徴のある先進的なヘルスケアテスティング企業」がビジョンに掲げられ、人材戦略では次の 2点が重点課題として明示されている。

1 つ目は「非連続な事業成長をスピード豊かに可能にする人材マネジメントの実現」である。

働く場所や時間、雇用形態に関わらず全ての人材が活躍できる仕組みや制度を整備し、戦略の実現に向けてグループ全体で多様な人材が安心して働ける環境の整備を推進するものである。

2 つ目は「一人ひとりの働きがいと One Sysmexを実現する組織風土の醸成とリーダーシップの変革」である。個を尊重し強みを活かすことで一人ひとりの働きがいを実現し、多様な人材を束ね One Sysmexを実現するというものである。

ダイバーシティ経営推進のための具体的取組

グループ共通の「グローバル人材開発体系」に基づいた、グローバル全社員の一体感の醸成や次世代リーダーの育成に取り組む

同社が 2014 年度に策定した「グローバル人材開発体系」は、「研修と評価と仕事(成果発揮)を接続」「シスメックスグループのグローバル化の促進」「継続的な人材開発投資」「人を育て、人が育つ会社」の 4 つのコンセプトに基づくグローバル共通の人材育成方針を示している。

同研修体系は、選抜型研修、階層型研修、及び自律選択型研修の 3 種類によって構成されており、シスメックスグループの社員であれば勤務地を問わず参加できる。

こうした育成における改革に加え、同社は 2020 年4 月、新たな人材マネジメントシステムを導入した。

個人の能力を等級化した職能型の人事制度から、役割や職務内容に基づき等級を決める職務型(ジョブ型)への切り替えを目指した今回の改革では、外部競争力を担保した報酬設計に移行することで、グローバルに活躍が期待できるリーダーや専門性の高い人材の獲得に繋がる事が期待されている。

更に、計画的な後継者育成および社員の主体的なキャリア開発により、社員の満足度ややりがいの向上も期待されている。

なお同社は、2012 年から既に通年採用を実施しており、国内外の優秀な人材を適時に採用する事が可能な環境を整備したり、2014 年には現地法人のトップを兼任する外国籍役員を任用したりするなど、グループ人事における一体化施策を進めてきていた。

この一連の人事施策により、多様性の価値観を全社員に浸透させ、優秀な人材が適材適所で活躍できる環境整備を実現している。例えば、階層型研修では、管理職に向けて企業理念やダイバーシティ経営に関する講習内容を提供したり、ジョブ型採用に向けた人事改革では、専門性が高い人材が適材適所に配置される環境整備を促したりする事につながっている。

なお、求める人材の幅が拡がり社員の価値観も多様化する中で、グループ企業理念「Sysmex Way」は、更に重要性を増している。

多様性の受容に関する方針は、「Sysmex Way」に基づきステークホルダーへ具体的な提供価値を示す行動基準、そして人材育成の基盤となる人材マネジメントシステムを通じて、経営トップから社内外に発信されている。

特に、社員に対する行動基準では「社員の多様性を受け入れ、一人ひとりの人格や個性を大切にすると共に、安心して能力が発揮できる職場環境を整え」、「自主性とチャレンジ精神を尊重し、自己実現と成長の機会、成果に応じた公正な処遇」を提供することを宣言している。

また同社は、「Sysmex Way」への共感度合いなどを測るエンゲージメントサーベイ(企業風土調査)を、グループ全社員を対象に 2 年毎に実施しており、グループ全体における人事戦略の重要指標として活用している。

恒常的かつ継続的な改善を可能にするダイバーシティ推進体制の整備

多様性受容の取組みを加速すべく、2017 年にダイバーシティ推進課(専任)を設置した。

社内の組織風土や制度に関する課題点を明確にすべく、隔年でダイバーシティ意識調査を実施し、社内状況や課題を確認す る 仕 組 み を 導 入 し て い る。こ う し た 戦 略 的 なPDCA サイクルに基づき、「働きがいと働きやすさ」を基点に活動を実施している。

例えば、外部講師を招聘した「ダイバーシティ講演会」や多彩なテーマを取り入れた座談会「ダイバーシティラウンドテーブル」、新任役職者に対する多様性とその受容の重要性を題材としたディスカッションを実施している。

また、「グローバル人材開発体系」やグローバル全社員を対象に実施しているエンゲージメントサーベイといった、各国内外の拠点に横断的に実施する人事施策も、各拠点の人事部長が連携する事でバランスのとれた導入を実現している。

ワークライフバランスと働きやすさを追求した社内の環境整備

働きやすい環境整備として、2000 年代にいち早くフレックス勤務制度を導入し、その後同社は、育児や介護と仕事の両立支援のため、在宅勤務制度や社内託児所の設置などの諸制度を拡充した。

また、ワークライフバランスの充実と業務生産性の向上・効率化を目指し、2020 年 10 月より 5 時から22 時の間で自宅やサテライトオフィスなどでデジタル技術を活用して働くスマートワーク制度の試験導入を開始した。

多様な人材獲得と能力発揮に向け、更なる成果が見込まれる。

ダイバーシティ経営による成果

ダイバーシティを価値として重視する文化の醸成が、先端技術開発における外国籍人材の活躍推進に寄与

前述のダイバーシティに関する意識調査では、社員のダイバーシティ&インクルージョンに対する理解浸透度は直近 2 年間で 30 ポイント改善、隔年実施の企業風土調査のワークライフバランスに関する項目でも10 ポイント向上した。

様々な意識改革に向けた取組の効果が確認され、多様な背景や個性をもつ仲間を当たり前の存在として受容する風土醸成が進んでいる。

また、同社が海外大学から直接採用した外国籍社員の仕事に対する独創的な発想や知見は、日本人社員が持つ戦略性や緻密さなどの強みとの相乗効果を生み出している。

例えば、外国籍社員が所属する開発チームが、先端技術開発に貢献した若手技術者を対象とした社外コンテストの社会人部門優秀賞を受賞した。当該技術は、将来的に同社の主力製品である診断薬への応用のみならず、製薬企業と共同で進めるバイオ医薬などの創薬活動の展開を推進でき、新規ビジネスの創出が期待できる。

引用:経済産業省 ダイバーシティ経営企業100選ホームページ

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