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スズキハイテック株式会社~ダイバーシティ経営の実践事例~

 

紹介

スズキハイテック株式会社は、リーマンショック、東日本大震災等の影響により受注が減少し、国内市場だけでなく世界市場へ進出をが必要となりましたが、法制度や文化が異なる海外での事業や取引に苦戦し、受注一辺倒のビジネスモデルでは太刀打ちが出来ないという現実に直面しました。

これまでの受動的な風土を変革することが不可欠であり、新たなことに挑戦する企業体質に変える必要があると考え、今までとは異なる多様な人材を採用し、会社のマインドを変えていくことが最良だと判断しました。そこで外国人社員を積極的に採用し、組織適応のサポートを始めとした様々な取組通して、企業風土・事業モデルの改革、新たな外国人社員の獲得に成功し、開発主導型かつ多様性を受容し成長できる社風に変化しました。

本記事では、同社がどのようにダイバーシティ経営を推進しているか、またダイバーシティ経営において重要となる外国人社員育成の具体的事例や成果についても紹介していきます。

スズキハイテック株式会社

山形県 :1914 年 設立
事業概要 :表面処理業

ダイバーシティ経営の背景とねらい

経営課題:文化の異なる海外での事業展開に苦戦、受注一辺倒のビジネスモデル転換の必要性

ス ズ キ ハ イ テ ッ ク 株 式 会 社( 以 下「 同 社 」) は、1914 年に創業した 100 年以上の歴史を持つ山形県のメッキ加工業者である。

創業当初、同社は主に仏具の表面処理を受注していたが、時代を経るにつれ、ミシンや音響・通信機器、半導体、現在ではハイブリッド車・電気自動車など、その時々の需要に対応し、大手企業から潤沢な受注を受けることで事業を拡大してきた。しかし、リーマンショック、東日本大震災等による工場閉鎖や工場の海外移転の影響により受注が減少、縮小する自動車等の国内市場・分野だけではなく、世界市場・分野に進出する必要があった。

同社は、2012 年には中国大手メーカーと技術提携、2014 年には同業他社と共同出資を行い、メキシコに現地法人を設立したが、法制度や文化が異なる海外での事業や取引に苦労し、現地の言語と文化を理解する外国人材の採用を検討し始めた。

また、新たな市場・分野に進出するためには、これまでの受注生産型のビジネスモデルでは太刀打ちが出来ないと考え、自ら開発した技術を売りに出していく開発主導型の企業に変革すべく、現経営トップが就任した 2015 年より、不採算事業の見直し・再編を行いながら新規技術開発と外国人材を技術者として採用する戦略を共に進めることとした。

人材戦略:海外展開先で活躍できる人材を採用、入社の際は企業の期待と人材の希望の合致を重視

同社が開発主導型の企業に成長していくためには、会社の伝統と蓄積した技術を基に、これまでの受注体制による成功体験が生み出した受動的な風土を変革することが不可欠であった。

そのためには、新たなことに挑戦する企業体質に変える必要があると考え、今までとは異なる多様な人材を採用し、そうした人材の活躍を通して会社のマインドを徐々に変えていくことが最良だと判断した。

また、近年激化する人材獲得競争において、優秀な日本人社員の採用が困難であったこともあり、優秀な外国人材の採用が求められた。

海外での事業に必要な言語が話せる人材を探す中で、まず海外拠点のあるメキシコと同じスペイン語が公用語であるボリビア出身の留学生 D 氏と、同社が事業提携を行う企業のある中国出身の留学生 R 氏に、地元山形大学で出会い、日本に来た理由や働く目的などの条件が企業側と合致したため 2015 年に両名の採用に至った。

ダイバーシティ経営推進のための具体的取組

外国人社員を組織に溶け込ませるための経営トップによるコミットメント

外国人を採用する際に重要なことは「理解と尊重と共有」である、と現経営トップは考える。採用にあたっては、会社の方向性と外国人社員の目的をすり合わせることで、外国人社員が安心して働くことが出来る環境づくりを目指した。

具体的には、採用前に現経営トップが外国人社員と直接話をする機会を設け、会社側として、望んでいること、期待していることを明確に伝え、また、外国人社員側の希望や目標を聞き取ることで、彼らの人生における「働く目的」を明らかにするよう努めている。

同社に最初に入社した外国人社員である D 氏と R 氏は社長直属として配置し、業務や、職場・生活環境など、出来る限りのサポートを経営トップ自らが行った。

100 年を超える長い歴史のある企業であるため、大きな変化を起こせば、社内から大きな反り返りが起きると予想し、外国人社員を受け入れるからと言って、あらかじめ職場環境や体制を大きく変えることはしなかった。何か問題が起きれば一緒に変えていくという姿勢を取り、外国人社員や社内にも事あるごとに伝え、外国人社員が組織に適応できるようサポートを行った。

言語や文化、宗教など、それぞれが持つ属性や価値観の違いを大事にし、理解し受け入れる姿勢を経営トップ自らが取ることで、その姿勢を社内に浸透させた。

現在では、最初に採用した外国人社員 2 名が先輩役として外国人社員の育成・支援を担う体制が整備されている。また、経営トップ自ら、外国人社員たちの故郷の実家を訪問し、家族と一緒に会話し食事を取りながら、経営者の気持ちを直接伝え、外国人社員が日本の中小企業である同社で働くことを理解し、快く送り出してもらえるよう働きかけている。

人材育成の方向性を明確化、要職に登用することでアウトプット能力も向上

前述のように、同社では外国人社員の採用に際して、はっきりとした採用のビジョンを持つことで採用後の活躍の場を明確化し、それによって外国人社員の育成の方向性も同様に明確化している。

当初採用した外国人社員の 2 人には海外事業を任せ、現地と日本本社の架け橋となることを期待していた。そのため、各人の専攻分野の基礎知識を活かしつつ、表面処理技術を学んでもらいながら、新規事業を任せることで、技術だけではなく経理を含めたビジネス面を理解してプロジェクトの管理も出来るように育成したいと考えた。

入社当初、D 氏と R 氏は日本人社員とペアを組み、技術や専門知識、会社のことを学ぶトレーニング期間を過ごした後、新規プロジェクトの一メンバーとして、技術開発を担当した。加えて、技術の他に、経理を含めた実践的なビジネススキルやプロジェクトマネジメントなど、全体の進捗管理も担当した。また、専門的な技術に加え業界の横の繋がりをつくることを目的に、東京で開かれる「上級表面処理技術講座」に 2018 年に採用した外国人社員である P 氏を派遣した。費用は年間 200 万円ほどとコストはかかるが、参加したことで技術をさらに磨き、新規技術開発に貢献した。

やる気と能力のある外国人社員は、1年以上働いた後、適性を見て役職をつけ責任感を持たせることで、アウトプット能力の向上を目指した。前述のボリビア人社員は国内で事業を担当し、同社の事業を把握したうえで、メキシコの拠点に品質管理責任者として配置した。

中国出身の社員は、中国での提携事業を現地と往復して担当しつつ、国内での新規事業開発に貢献し、それぞれ部長職、課長職へ登用した。

外部メディアを活用、外国人社員の活躍を社内外に発信し、外国人社員へ自信を、日本人社員へ刺激を与える

同社では、D 氏や R 氏を含む外国人社員の活躍について講演活動やメディア発信など、外部への PR を積極的に行うことで、社内外に効果的に発信している。

就任以来、現経営トップは留学生や研究開発などのテーマについて多くの講演を行ってきた。

こうした活動により、地域の大学や県内の企業とのつながりを拡大し、現在では、地元テレビ局やその他メディアでの発信の機会も増えてきた。地域での講演や、新聞、 テレビなどで外国人社員の活躍を積極的に PR することで、自社の取組を外部に紹介するのみならず、外国人社員が会社に貢献し重要な存在であることを内部に伝えることに成功し、外国人社員の自信ややる気に繋がると同時に日本人社員にも良い刺激となった。

また、外国人社員が取り上げられた番組の DVD 等は保存し、社員の両親に共有することで、遠く離れた家族にも活躍を知ってもらい、外国人社員のみならず、彼らの家族も安心できるよう努めた。

ダイバーシティ経営による成果

外国人社員の活躍による企業風土・事業モデルの改革、活躍発信による新たな外国人社員の獲得

同社の技術開発において、次々と結果を出す外国人社員を皆が認め受け入れるようになり、既存の社員にも影響が広がることで、受け身であった姿勢から、新しい技術に挑んでいく組織風土が確立されてきた。

従来の組織体制では難しかった不採算事業の見直しや新規事業への計画策定など、自発的に考え進める体制が社全体として生まれた。

2015 年から開始した事業再編と新規事業開発は、効果が徐々に現れ、電動化による自動車産業の構造変化に対応した主力製品(パワーコントロールユニット、ハイブリット車用電池、次世代直噴インジェクター)の量産化が 2019 年度から順次立ち上がり、2024 年5 月期には 2020 年 5 月期比 2.4 倍の 27 億円の売り上げを見込んでいる。

また、完成車メーカーとの直接取引という大きなビジネスにもつながっている。

2019 年からは、経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援(サポイン)事業を受託し、山形大学、公設試験機関とともに 3 年間の研究開発を実施している。3D フォトリソグラフィを応用した世界初の三次元形状「MEMS 精密電鋳めっき」を実現し、経済産業省が新たな地域の牽引役として期待する成長分野へ2022 年に新規参入する予定である。

さらに、山形県研究開発助成金を活用して取り組んでいる「炭素繊維強化プラスチックへのめっき技術」は、高付加価値な宇宙ビジネスや車載展開を目指している。

2016 年には中小企業庁「はばたく中小企業・小規模事業者 300 社(海外展開部門)」に、2018 年には経済産業省「地域未来牽引企業」に選定されるなど、地域における存在感を強めている。また、外国人社員の活躍、能動的な PR を心がけた結果、積極的な求人活動は行わずとも、地元山形大学等から優秀で意欲ある人材の確保に成功している。

2018 年に採用された山形大学のバイオ化学工学科に在籍していたインドネシア出身の P 氏は、サポイン事業の主要メンバーとして研究開発に励んでいる。

2019年にインドネシアとバングラディシュ等の人材を技能実習生として採用した際には、採用プロセスから入社後のフォロー、現地語のマニュアル作成や指導など、一貫して外国人社員が担当することで、社員の自発的なサポートが自然と行き届く体制が構築されている。

引用:経済産業省 ダイバーシティ経営企業100選ホームページ

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