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SAPジャパン株式会社~テクノロジーを活用したグローバル組織・人材インフラの整備~

紹介

外資系企業であるSAPジャパン株式会社では、人事組織を、各国ごとからグローバル全体で一本化するため、プラットフォームシステムを整備・活用し、社内の組織情報や人材データの集約化を行っています。

上記の導入により、グローバル全体での人材情報の可視化や、人事業務に関するナレッジシェアが実現され、グローバル全体に対する、迅速な人事戦略が可能となっています。

本記事では、SAPジャパン株式会社が、システムを活用してグローバル全体での人材情報を一元管理したことが、どのようなシナジーをもたらしたのかを、具体例も踏まえて紹介します。

要旨

SAP ジャパン株式会社

業種:サービス業
売上:9 億 8,900 万ユーロ
従業員:1,100 人(2018 年 12 月時点)
資本タイプ:外資

背景・課題認識

ERP 事業の一本足打法からの脱却を目指し、2010 年の中期経営計画で事業多角化、グローバリゼーションとイノベーションを掲げ、事業・組織・人材の変革を進めてきた

施策内容や導入時の対応

・ グローバル全体での組織統合に伴い、組織情報と人材情報をシステムのプラットフォームで集約化した

・ 人事部主導に加え、ビジネス現場に人材マネジメント全般を権限委譲し、現場が適切に機能するための人材育成コンテンツ、評価システム、採用システムをグローバル全体で整備する取り組みを推進している

・ グローバル全体でシェアードサービスを推進し、各拠点の業務効率化やナレッジシェアを進めている

・ インターナルジョブポスティング制度を促進、グローバル全体で人材募集を行っているポジションを開示し、従業員が応募できるシステムを展開し、キャリアのオーナーシップを個人に持たせている

・ 外部のコミュニティや顧客、社員間など、情報交換やナレッジシェアのシステムインフラを社外にも公開して、整備している

導入後の影響や効果

・組織のグローバル統合に伴うグローバル全体での人材情報の標準化を通じて、グローバル全体での人材の可視化、活用が可能となった

・e-ラーニングは、現場主導で必要なコンテンツの受講を社員に促しているので、9 割以上の社員が必修研修以外の研修も受講している

・グローバル全体でのジョブポスティングのプラットフォーム整備を通じて、ビジネススピードの変化に対応する形で人材の流動性を高め、最適な人員配置を実現している

今後の方向性・課題

ノーレイティング評価制度を機能させるうえで、現場への権限移譲が進む結果、現場のマネージャーの負担が増大しており、評価の判断材料の収集・活用においてシステムを一層高度化する必要がある

制度や施策導入の背景

ERP 事業に依存する事業モデルからの脱却を目指し、2010 年の中期経営計画で事業多角化、グローバリゼーションとイノベーションを掲げ、事業・組織・人材の一体変革に取り組んだ

・世界全体の経済のグローバリゼーションと同調し、ビジネス地域を先進国中心から BRICS など新興国へとビジネスを展開した

・これまでは、各地域の販社による現地最適でのビジネスを行っていたが、グローバル全体での新規事業を推進していく上で国や地域をまたがるグローバル横串での組織運営が必要となり、組織・人材インフラの整備が課題に挙がった

施策内容や導入時の対応

グローバル全体でのビジネス展開に向け、組織・人材管理のプラットフォームを整備した

・人事組織を、各国組織から、グローバル組織として一本化し、人事戦略を迅速にグローバルで実行するための組織体制を整備した

・ グローバル横串でのマジメントを行う際に、別地域・別拠点の人材を管理する必要が出てきたことから、グローバル全体で自社人材マネジメントシステムを活用し、人材情報の収集・可視化を行った

トレーニングをデジタル化し、人材教育・育成プログラムをグローバル全体で展開した

・ビジネスニーズに沿って、教育・育成コンテンツをすぐに作成、提供できる環境を整え、ビジネスの変化スピードに合わせたコンテンツを現場で利用できるようにした

・ 人事部起案のコンテンツとビジネス現場からのボトムアップのニーズを盛り込んだコンテンツを合わせ、計 2 万コンテンツが常時提供されている
– 業界特性である変化スピードの速さに対応して、ラーニングコンテンツなどプラットフォームの整備から現場への権限移譲を推進、現場発での人材育成を一貫して実施している
– 1 人 1 人の学習意欲を高めるため、グループワーク形式のインタラクティブなオンラインプログラムや、オンサイト研修も組み合わせて提供している
– 多くのコンテンツをモバイルアプリへ移行しており、場所を選ばず研修を受講できる環境を整えている

・ ラーニングシステムと社内 SNS が統合されているため、受講者同志や、インストラクターと受講生などで、情報交換や、質問、研修後のフォローアップなどをリアルタイムに行うことができる。

・e-ラーニングによる能力開発において、最も困難な点である社員本人のモチベーションの維持・向上は、受講者同士による相互交流や現場での経験を通じた学びなどを、現場の管理職を含めてフィードバックを組織全体で促すことで解決している

シェアードサービスを推進し、HR 機能の効率化やグローバル全体でのナレッジシェアを実現している

・給与計算の業務オペレーションは地域単位で集約化されており(日本はアジア地域として集約)、人事のデータマネジメントはグローバルで一元管理している

・労務に関する質問事項や個別対応は、グローバル全体で HR ダイレクトという窓口機能を設置し、一元管理している

・ HR ダイレクトは、システムを通じて、労務に問い合わせが出来る社員向けのシステムサービスであり、毎月約 2,2000 件の問い合わせが行われている

・チャットボットを活用した自動応答ツールは、現在試験段階であるものの一部地域では取り組みを始めている

・シェアードサービスセンターの設置により、グローバル全体で人事部内の最適な人材配置を推進できる体制が整った
– シェアードサービスセンター設置国でプロパー人材を新規で雇い、マニュアルや教育プログラムを通じて現地人材への業務移管・育成を実施した
– シェアード化により職務が移管された人材に対しては、ロールチェンジを促した

インターナルジョブポスティング制度を導入、人材募集を行っているポジションをグローバルに開示し、従業員が応募できるシステムを展開することで、キャリアのオーナーシップを従業員自身に持たせている

・希望ポストへの応募は、上司の認可を必要とせず、個人の意思決定で行える

・ 現部署で 1 年以上の在籍期間があること以外、応募は制限なく行える

・ 募集から、応募、面接、採用に至る全てのプロセスがシステムで管理されており、外部採用とも統合されているため、募集部門の管理職は、全ての候補者を比較することできると共に、過去の応募者も確認でき、採用プロセスの大幅な効率化に繋がっている

グローバル全体での社員コミュニケーションを促す取り組み

グローバルの社員全体で、「ありがとう」を伝え合うアプリシエーションプログラムを導入・活用している。

イノベーションや事業多角化の分野では、他事業の買収に加えデータベース事業やスポーツ事業など新規事業創出に注力している

・新規事業創出を促進するため、異なるバックグランウドを持つ人材の採用を新卒・中途問わず積極的に行っている

・評価制度をノーレイティングに移行し、絶対評価による人材評価制度を導入した

・新規事業の創出を促すような能力を持つ人材を毎年選抜し、その人材を中心にそれぞれの現場での新たな取組を後押しして、企業全体の文化を変化させていくことに注力している

・年一回、グローバル全体で事業コンテストを実施し、社員の事業アイデアをグローバルのプラットフォームに提出し、グローバル全体で共有されるシステムを整備している

プロジェクトベースでの活動に即して、コミュニティ単位での情報交換の場を設けた

JAM という SNS ツールを用いて、情報や、経験、ナレッジを社内外での情報交換を行える場を設けた

採用

採用した人材の入社後のパフォーマンスや定着率を人材管理システムに登録し、集積されたデータを採用に役立てている

マネージャーのマネジメント支援を行うシステム

人材のダッシュボードをマネージャーに提供している

導入後の影響や効果

組織のグローバル統合に伴うグローバル全体での人材情報の標準化を通じて、グローバル全体での人材の可視化、活用が可能となった

・SAP Success Factors を活用して、個人の経験、スキルレベル、強み、弱みを可視化して、グローバル全体で個々の従業員の可能性を共有することで、人材の強みやその強みを活かせるアサインメントの実施に役立てている

e-ラーニング

コンテンツが充実していることや現場主導で必要コンテンツの受講を社員に促すなどの取り組みを通じて、9 割以上の社員が必修研修以外の研修も受講している

グローバル全体でのジョブポスティングのプラットフォーム整備

ビジネススピードの変化に対応する形で人材の流動性を高め、最適な人員配置を実現している

アプリシエーションシステム

上司が完全に把握しきれない部下の努力・功績を判断できることや、社員同士のコミュニケーションの醸成、社内への助け合い精神の醸成などの役割を果たしている

システムを活用して、グローバル全体で新規事業やイノベーションの創出に向けた採用を積極的に展開

全社員の約半数を占めるミレニアム世代が人材戦力の中心となっている

年 1 回開催の事業コンテスト

毎年 200~300 前後のアイデアが社内に蓄積されている

今後の方向性、課題

ノーレイティング評価制度を機能させるうえで、現場に権限移譲が進む結果、現場のマネージャーの負担が増大している

社員に対して、評価の納得性を高めモチベーションを高めるため、評価の判断材料の収集・活用においてシステムを一層高度化する必要がある

さらなるイノベーション推進

新たなビジネスを推進する人材の発見、育成を一層進める必要がある

<参考>
① ラーニングシステム           ② 社内公募システムのページ

引用:経営競争力強化に向けた人材マネジメント研究会 報告書(経済産業省)

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