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グローバル化が進む中、大企業から中小企業まで、海外勤務の機会が広がっています。
海外でのキャリアに憧れる就活生も多い中、実は海外赴任者の労働環境に深刻なリスクが存在していることは、あまり知られていません。
本記事では海外赴任のリスクについてご紹介します。
人事部や海外事業部の方は、グローバル人事施策の参考記事としてお役立てください。
現在、日本の労働基準法は原則として国内勤務者を対象としており、海外に派遣された社員には適用されません。まさかと思われるかもしれませんが、現状はそのようになっています。
画像引用:朝日新聞
日本の労働基準法が適用されないことで、長時間労働が黙認される土壌が形成されてしまっているのです。
特に中小企業における海外赴任者の増加と比例して、健康管理や労務対応における対応不足が深刻化しています。
日本国内では労働基準監督署の監視下で管理される労働環境も、海外では企業の自主性に委ねられており、結果として労災保険の「特別加入」すらされていないケースもあるのが実情です。
厚生労働省によれば、海外勤務者の特別加入制度に基づく労災認定件数は2020~2023年度でわずか10件とされていますが、実際の加入率は不明です。
これは、企業が手続きを行わなければ適用されない制度設計に起因しており、制度の“存在”と“運用”に大きなギャップがあると指摘されています。
もし海外で仕事中に過労死してしまったり、通勤中に事故にあったりしても、会社が特別加入の手続きをしていないと労災と認められず、医療費や休んだときの賃金の補償などは受けられないのです。
画像引用:朝日新聞
こうした背景を受け、過労死遺族や弁護士、研究者などが集まり、「海外労働連絡会」が結成されました。国に対して労働環境の実態把握と法整備を促すとともに、企業にもより積極的な対応を求めています。
企業としては、単に海外派遣の制度を整えるだけでは不十分です。
現地の医療体制や労務リスク、時差労働の影響、言語や文化ストレスなど、包括的なリスク評価をもとに労務管理体制を再設計し、赴任者の健康と安全を守る体制を構築する必要があります。
海外勤務を希望する社員が安心して挑戦できる環境を整えることは、企業のグローバル人材戦略にも直結します。
働く人の命と健康を守ることが、企業の持続的な成長と信頼性につながるのです。
配信元:朝日新聞
公開日:2025/04/23
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