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2024.05.17

在タイ日系企業の40.4%が人材不足、企業に求められる対応とは

紹介

ジェトロが2023年8~9月に実施した「2023年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」によると、タイでは日系企業の40.4%が人材不足に直面していることが明らかになりました。

新政権の筆頭政党であるタイ貢献党は、2027年までに法定最低賃金を引き上げることを公約として掲げており、今後も人件費の高騰に拍車がかかる可能性があります。

本記事では、タイにおける人材不足や人件費高騰の背景、今後の方向性について紹介します。
海外事業戦略立案や当該国のビジネス環境改善立案等における指標としてご利用いただけます。

ポイント

ポイント①

同調査によると、在タイ日系企業の40.4%が人材不足の課題に直面していることが明らかになりました。一方、アジア・オセアニア地域全体では47.9%が人材不足の課題に直面していることから、タイの状況は相対的には悪くないともいえる状況です。

タイでは人材不足が深刻と回答した企業の割合が一般管理職で79.8%、専門職種で73.1%となり、地域全体の平均より高い結果となりました。また、タイ国日本商工会議所が実施した「2023年上期在タイ日系企業景気動向調査」の結果から日系企業においてエンジニア不足が顕著であることも明らかになっています。

タイにおける人材不足の割合は相対的に悪い状況でははありませんが、一般管理職やエンジニアなどの人材不足が深刻な状況と言えます。

画像引用:独立行政法人日本貿易振興機構

ポイント②

人材不足の要因の一つとして、少子高齢化による生産年齢人口の減少が挙げられます。タイは、ASEAN各国の中でも著しく高齢化が進んでおり、国連の世界人口予測によれば、タイの人口は2029年に7,207万人とピークに達し、その後減少する見通しです。

また、昨今、タイ人の求職者が地場企業や日系以外の外資系企業を就職先として選択する傾向があります。タイの大手財閥系企業やインフラ開発企業において給与や待遇面も向上してきていることから、タイの大手企業の方が就職先として人気があるとの指摘もあります。

タイの投資環境上のリスクを問うた設問では、「人件費の高騰」と回答した企業の割合が72.8%と最も多い項目となりました。2023年に発足したタイ貢献党の政権公約の1つが2027年までに日額最低賃金を600バーツに引きあげることです。仮にこれが実現するとなれば、最低賃金の上昇だけにとどまらず、他の給与体系にも上昇圧力が働き、ますます企業のコスト負担が増加し競争力に影響することになるでしょう。

画像引用:独立行政法人日本貿易振興機構

ポイント③

人材不足や人件費の高騰への対応として、自動化に取り組む企業もあります。同調査にて、製造業企業に対し自動化の取り組み状況を尋ねた結果、3割弱の企業が自動化を実施済みであったものの、自動化が十分に拡大していないことが明らかになりました。また、自動化に取り組む理由については「人件費の上昇」との回答が79.4%と最も多い結果になりました。

自動化の障壁については、5割超が「自動化技術を扱える人材の確保が困難」としており、人件費の高騰に対処するために自動化を試みる一方で、それを扱える専門人材が確保できないという構図になっており、一筋縄ではいかない状況となっていることが分かります。

今後人材を取り巻く課題に対して、自動化だけでなく、給与体系の改善や人事制度の改革などを通じた優秀な人材の獲得・定着、政府による定年延長を可能にするような法整備など、様々な解決方法を模索する必要があると言えるでしょう。

調査詳細

調査の目的

アジア・オセアニアにおける日系企業活動の実態を把握し、その結果を広く提供することを目的とする。

調査対象

北東アジア5カ国・地域、ASEAN9カ国、南西アジア4カ国、オセアニア2カ国の計20カ国・地域に進出する日系企業
(日本側による直接、間接の出資比率が10%以上の企業および日本企業の支店・駐在員事務所)

調査時期

2023年 8月21日~9月20日

回収状況

1万4,018社に回答を依頼し、4,982社より有効回答を得た。(有効回答率35.5%)。

概要

配信元:独立行政法人日本貿易振興機構

公開日:2024/5/16

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