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インド駐在員のための法務・労務ハンドブック(第6版)

紹介

インドの労働法は、中央政府が制定する連邦法だけで50以上、州法を含めると数えきれないほどの関連法規が存在し、企業が抱える問題にどの法律が適用されるのかを現地駐在員が正確に把握するのは困難な状況にあります。

本記事では、JETROが作成した「インド駐在員のための法務・労務ハンドブック(第6版) 」を基に、インドにおける法務・労務についてのポイントをご紹介します。

インドにおける事業戦略立案やビジネス環境改善立案等における指標としてご利用下さい。

ポイント

ポイント①

インドでは、原則として雇用契約書・就業規則を作成する法律上の義務は存在しません。(一定規模を超える工場を除く)
しかし、インドでは労務関係のトラブルが非常に多く、その対応で貴重な日本人リソースが割かれてしまう恐れがあるため、紛争予防・無用な内部的やりとりを削減するためにも、雇用契約書および就業規則を作成することが推奨されています。

さらにインドでは州ごと、そして拠点の種類ごと(オフィス/工場)に法規制が異なるため、その違いに対処する事、また、頻繁な法改正を把握し内容が最新のものであるか確認する事、が雇用契約書および就業規則を作成する上で重要になります。

ポイント②

インドにおける賃金の支払いおよび最低賃金については、「賃金支払法」「最低賃金法」によって規律されており、賃金支払期間、賃金の天引き上限、職種および熟練度などに応じ細分化される最低賃金などについて定められています。

勤務時間・残業については「店舗施設法」や「工場法」によって規律されており、州法である店舗施設法が州ごとに異なることは勿論、連邦法である工場法も、勤務時間の規律に関しては州政府に規則制定権限が認められており、州ごとに規制が異なることがあり得る点には留意が必要です。

産休・出産給付の支払いについては「出産手当法」に定められており、女性従業員が妊娠した場合、同法に基づく休暇等を与えます。女性従業員は最長26週間の産休を取得可能、 50人以上の従業員が勤務する事業所には託児所の設置が義務付けられる等、日本人駐在員も概要について把握しておくことが重要です。

ポイント③

インドでは贈収賄行為は主に、「汚職防止法」よって規律されていますが、贈収賄はビジネスシーンはもとより市民生活においても一般的なものとして浸透しています。2018年に法改正がなされ、汚職行為の処罰対象が拡大し、日系企業のリスクが高まりました。私人間の汚職を特別に処罰する法律は現時点では存在しないものの、会社のみならず駐在員も処罰の対象となることがありうるため、誰のどのような行為が処罰対象とされるか正確に把握する必要があります。

また、インドではトラブルの際に相手方が駐在員の逮捕リスクをちらつかせることによって問題解決を図ろうとする場面があります。インドでは警察が賄賂や個人的な人間関係によって動くことが珍しくなく、しかも警察の逮捕に関する裁量の範囲が広いため、例え相手方の脅しが不合理なものであっても、逮捕リスクを軽視することは出来ないのが実情です。

 先に述べた通り、インドの労働法には数えきれないほどの関連法規が存在し、その網羅的な把握に困難を極めるという問題が存在していましたが、主に2020年に実施された労働法改革によって29の法律が、「OSH Code」「IR Code」「SS Code」「Wage Code」という4つのLabour Codeに統廃合されました。

2024年3月現在、州が制定する施行規則が制定されておらず、Wage Codeを除く各Labour Codeの主要部分が未施行の状態にありますが、今後の法整備とそれに伴う法律の簡易化・合理化が期待されます。

 

概要

配信元:独立行政法人日本貿易振興機構
公開日:2024/03

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