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2023.02.07

株式会社LIXIL~事業規模拡大に伴うダイバーシティ&インクルージョンの推進~

 

紹介

株式会社LIXILでは、「住生活産業のグローバルリーダーとなる」という経営目標を達成するために、「ダイバーシティ」をエネルギーや創造性を生み出すものとして捉え、設立当初から重要な経営戦略の一つとして位置付けています。

2017年には「LIXIL ダイバーシティ & インクルージョン宣言」を表明し、グローバルへの浸透も力を入れて行っています。

なかでも、女性活躍の推進やLGBTへの取り組みは、社外からも非常に高い評価を得ており、またビジネス面においても、多様性を取り入れた商品開発が成功を収めるなど、確実に成果にもつながっています。

本記事では、「ダイバーシティ&インクルージョン」の取り組みをグローバルにどのように浸透させ、どのような効果をもたらしているのか、紹介します。

要旨

株式会社 LIXIL

業種:建材・建築資材(アルミサッシ)、建材・建築資材(金属系)、住宅設備(衛生機器)
売上:1 兆 6,648 億円(連結 / 2018 年 3 月時点)
従業員:連結 61,140 人(2018 年 3 月時点)
資本タイプ:日系

背景・課題認識

・2011 年、国内の主要な住宅建材・設備メーカー5 社が統合して(株)LIXIL が誕生。ダイバーシティは経営目標達成のための重要な経営戦略で、目指す企業文化の 1 つとして位置付けられた

・2013 年「LIXIL Diversity 宣言」を発表。取り組みの端緒として、約 23%を占める女性の活躍推進に注力した

・現在は、更に取り組みの幅を広げ、全ての多様性を対象とした本来のダイバーシティ &インクルージョンの捉え方をグローバルに浸透させている

施策内容や導入時の対応

・女性:数値目標を設定し、達成に向け各ビジネスと協働している。具体的な施策は、人事施策、人材育成、環境整備、風土醸成の 4 つの観点から導入され、それぞれの取り組みで成果を創出してきた。また、会社で働くワーキングマザーの声をもとに、女性のキャリア形成を支援するサポート施策を導入しており、これらの取り組みは社外でも高く評価されている

・ 性的マイノリティ(LGBT):2017 年からグループを挙げて取り組みを開始。LGBT に関する啓発活動や、Ally を募集し Network 活動を行っている

・グローバル:2017 年に「LIXIL Diversity 宣言」を改定し、「LIXIL ダイバーシティ & インクルージョン宣言」とした。この改定により女性以外のマイノリティも含めた全社員が、よりいきいきと働ける企業を目指すことを明示した。現在は、「目標の見える化」を進めて
おり、グローバルそれぞれの拠点が、自分たちが注力したい領域の目標値を設定して、取り組みを進めている

導入後の影響や効果

・女性:数値目標を設定し積極的に取組んだことで管理職比率は向上し、女性採用比率も 30%以上を継続している。女性の思い・声を取り入れた商品がヒットするなど、ビジネスへの具体的な貢献事例も増えてきている

・性的マイノリティ(LGBT):性的マイノリティに対する取り組みが対外的に評価されている。社外の LGBT 当事者との交流会が盛況を博すなど、取り組みに対する理解と関心が社内で確実に高まっている

・グローバル:各国拠点の裁量を認めたアプローチが拠点トップの理解を得ており、具体的なビジネスの成果に繋がるような取り組みも現れ始めている

今後の方向性・課題

・女性活躍推進に関しては、新たな数値目標を定め、引き続き取り組みを加速している

・「社会貢献をする」という企業使命にとどまらず、この活動が実ビジネスでどのような成果を挙げているかということを追求していくことで、そもそもの意義を実感から浸透する仕組みを強化していく

背景・課題認識

2011 年国内の主要な住宅建材・設備機器メーカー5社が統合して、(株)LIXIL が設立された

エネルギーと創造性を生み出すダイバーシティは、「住生活産業のグローバルリーダーとなる」という経営目標を達成するために必須であり、重要な経営戦略/目指す企業文化の 1 つとして位置付けられた。

2012 年ダイバーシティを加速する推進役としてダイバーシティ推進室を設立し、2013 年「LIXIL Diversity 宣言」を発表した

・ 取り組み当初は、ダイバーシティという言葉さえ十分に認識されていなかった。そこで、今後の会社方針・取り組みを明示するために「LIXIL Diversity 宣言」を社内外に公表した

・ 取り組みの端緒として、全体の約 23%を占める女性の活躍推進に注力した。また女性の管理職比率が 0.9%であることを大きな課題として認識していた。

社会/顧客のニーズの多様化に対応するために、LIXIL のダイバーシティも一段階進化することが求められている

女性の活躍推進に加え、全ての多様性を対象とした本来のダイバーシティ & インクルージョンの捉え方をグローバルに浸透させる取り組みにチャレンジしている

施策内容や導入時の対応

女性

▶2014 年、女性の活躍推進を加速するアクションプランとして「WeDo アクション」を策定した

・ コミットメントの形として、数値目標を設定した(女性比率を①管理職登用者の30%以上 ②新卒採用者の 30%以上 ③リーダー育成プログラム参加者の20%以上とする)。数値目標は、会社・社員双方にとってストレッチを必要とするレベルに定めた

・ 数値目標の設定は、LIXIL の会社のカルチャーにフィットし、変革のドライバーとして非常にうまく作用した

▶女性活躍推進の取り組みは、①人事施策、②人材育成、③環境整備、④風土醸成の 4 つの観点から進められた

①人事施策(女性の採用や登用など):優秀な女性の発掘と、機会の提供・育成のために、POD(People & Organization Development の略)という CEO と各部門トップが「人と組織」について幅広く議論する会議体)を活用し、候補者の発掘や育成プランの策定等を実施した

②人材育成(リーダー育成):主な施策として各種研修機会を提供した。特に全
年代層・職責階層別に約 6~8 ヶ月かけて実施するリーダーシップ育成プログラムでは、「まぜて育てる」の考えのもと、男女混合での研修を実施している

③環境整備(仕事と私生活の両立支援策の策定など):ライフステージの変化があっても高いパフォーマンスを発揮できる環境を整えるべく、労使一体となった「WLF(ワークライフフレキシビリティ)検討委員会」を設置し、「働き方、休暇に関する諸制度」の導入・改定などを実施した(育児休業期間の延長など)

④風土醸成(啓発活動・女性ネットワークの構築):ダイバーシティの浸透・啓発のため、社内イントラを開設し、リーダー層による「自身の考えるダイバーシティ」についてのメッセージ発信や活躍する女性のロールモデルの紹介等毎月更新している。メッセージを発信したリーダーが次のリーダーを指名するリレー方式で現在まで続く息の長い取り組みになっている。他にも、女性自身が活き活きと働くために必要なことを考え実行する機会を提供するべく、LIXILWomen‘s Network を創設し、モチベーションアップを目的としたフォーラムな
どを開催している

▶「WeDo アクション」の一環として、会社で働くワーキングマザーの意見をもとに、キャリア形成サポート施策を展開している

・ままっぷ:

妊娠が分かった時点から職場復帰するまで、本人・上長・HR との間でとるべきコミュニケーションのロードマップを示している。出産予定日を入力すると、「この時期に上司と面談する」、「この時期までに○○の書類を人事に提出する」といった内容が時系列で表示される。

・上長面談シート:

妊娠している女性社員と上長との間で円滑なコミュニケーションが図られるよう、あえて話題にしづらい内容(「どれくらいで戻ってこられそうか?」、「戻ってきたら時短になるのか?」など)を盛り込んだ上長面談シートを作成して積極的なコミュニケーションを促している

・“上長向け”e-ラーニング:

産休・育休を取得した部下を持ったことのない上司もいるため、コミュニケーションに必要な基礎知識を身につけるための“上長向け”e-ラーニングを整備した。例えば、育休に入る際の面談で、上司が配慮から「ゆっくり休んでよい」と言うより、「大変なのは分かるが、待っているから戻ってきてほしい」と伝えたほうが、女性は“職場で必要とされている”という意識を強く持
てて嬉しく感じる、といった内容を含んでいる

・アラウンドバース 15DAYS Program:

15 日間の研修プログラム。女性自身が自分の働き方を考え、自身の強みを認識することを助ける目的で設計されているオリジナルのプログラムでダウンロードして、自分の都合に合わせて受講することができる

性的マイノリティ(LGBT)

▶2017 年からグループを挙げて取り組みを開始した。全社員が LGBT について正しく理解した上で行動することで、社内での多様性が尊重され、社外では当事者の抱える課題の解決に寄与し、結果的に企業価値の向上にも繋がるという考えに基づいている

▶「当事者に関して、どうしたら良いか分からない」という声が多かったため、取り組みの一つとして、特に心がけるべき 4 つの行動のポイントを定めた

・ 行っていただきたいこと:「性的マイノリティ(LGBT)に関して、正しく理解してください」、「社内で配慮に欠けた言動をしている人を見かけたら、話題を変えるか、そっと注意をしてください」

・ してはいけないこと:「配慮に欠けた言動は控えてください」、「カミングアウトされた場合、アウティング(本人の許可なく第三者に話すこと)は絶対にしないでください」

▶他にも、「LIXIL Ally」Network の立上げ(性的マイノリティについて正しく理解した上でサポートしたいという意思のある者が Ally として登録できる仕組み。

2019 年 2 月時点で 1400 名以上が自分から賛同して Ally になっている)、啓発活動(外部の講師を招いた勉強会、幹部への説明会、全従業員向け e ラーニングなど)、環境整備(ジェンダーに関わらず利用できるトイレの設置)などの取り組みを進めている

グローバル

▶女性の活躍推進に加え、全ての多様性を対象とした本来のダイバーシティ & インクルージョンの捉え方をグローバルに浸透させるべく、2017 年に「LIXIL ダイバーシティ&インクルージョン宣言」が明示された

重点領域として、Gender & Age、Disability、LGBT、Family & Life、CrossCultural の 5 つを掲げている

▶重点領域策定においては、日本で原案を作成し、各リージョンの人事ヘッドを巻き込んで検討を進めた

検討のプロセスの途上で、まさにリージョンの多様性に直面することになった。例えば、ドイツからは LGBT についてあえて取り上げることは却って配慮に欠ける、という指摘が出た。またアメリカでは年齢などの個人情報を会社がヒアリングすることが許されていないため、宣言に入れられては困るといった声が挙がった

▶現在は、「目標の見える化」(ダイバーシティ関連の数値目標の設定)に取り組んでいる

各事業/リージョンにおいて、個別現状に応じた SMART(Specific,Measurable, Achievable, business-Related, Time-bound)目標を 1 つ以上設定することを課している。地域ごとの独自性を尊重しつつも、グループ一丸となってダイバーシティの取り組みを推進している

導入後の影響や効果

女性活躍

▶2018 年時点で、①女性管理職比率 6.1%(2012 年時点 0.9%)、②女性採用比率31.5%(5 年連続 30%以上)、③リーダーシップ育成プログラムへの女性参加率 5年連続 20%以上という数値目標を達成した

▶女性がリーダーシップをとったプロジェクトや、女性の思い・声を取り入れた商品開発の成功事例が具体的に現れており、ビジネスへの貢献という成果に繋がっている(以下、例)

①従来ケニアには拠点がなかったが、女性社員が希望して衛生機器の普及活動を開始。ビジネスとしては 23 億人の市場開拓の第一歩となった

②開発チームの女性がユーザー視点で改良を加えた日よけや、女性のチームが開発した、従来にはない色を取り入れたインテリア商品がそれぞれ賞を受賞している

③シックスシグマ手法を活かした改善活動のリーダーにも女性が 30%以上選出され、改善額が利益に貢献している

性的マイノリティ(LGBT)

▶性的マイノリティに関する取り組みが評価され、「PRIDE 指標 2017・2018(任意団体「work with Pride」が先進企業と協働して LGBT に関する取組みを評価する指標を策定)」で、2 年連続最高位のゴールドを受賞した

▶社外の LGBT 当事者との交流会が盛況を博すなど、取り組みに理解・関心を示す社員が着実に増えている

グローバル

▶グループ共通の重点領域を制定した。国や地域の違いが大きいため手探りの部分も多いが、一歩一歩前進している

▶各国の拠点それぞれが注力したいダイバーシティのテーマに取り組んでもらうことで、拠点トップの理解も得られやすくなっている

①Disability に注力する拠点では、障害者が働きやすい環境を実現するために、トイレに手すりを設置するといった施策を展開している

②Culture & Identity に注力する拠点では、国内で生活をしている全人種の採用を進めている

今後の方向性・課題

女性活躍

▶2021 年までの取り組みとして「ダイバーシティ&インクルージョン宣言 - Japan2.0-」を策定。以下の 3 つの数値目標を掲げている。

①パイプライン形成(毎年):上位資格層(一般社員)の 30%以上を後継者育成計画などへ登録する

②採用(毎年):学卒(院卒含む)の定期採用において女性比率を 30%以上とする

③育成(毎年):選抜型育成プログラム(若手クラス)の 20%以上を女性とする

性的マイノリティ(LGBT)

▶性的マイノリティに関する取り組みに関しては、3 つの目標を掲げている。具体的には、

①啓発活動:全社員に対して理解促進施策を毎年実施する

②Ally の拡充:全国の全拠点(50 人以上在籍)に 2 人以上とする

③環境整備:人事制度等の適用拡大などを実施する

グローバル

▶海外人事トップ含め引き続き着目していることは、「社会貢献をする、会社が社会に対して良いことをしている」という企業使命にとどまらず、実ビジネスにおいても「これらの活動がどのように戦略と合致して実行できているのか、それによりどのような効果が挙がっているのか」を追求していくこと。これらの活動を通じ、ダイバーシティ&インクルージョンの本来的意義を実感し、浸透させていく仕組みを強化していくことを目指している

引用:経営競争力強化に向けた人材マネジメント研究会 報告書(経済産業省)

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